今回は近藤一博さん著の『疲労とはなにか』を紹介していきます。
皆さんは、最近疲れが抜けない、どうやったら疲労を減らせるか知りたいといった悩みはないでしょうか?
本書は、そういった方に役立つ 1冊です。
本書では、日本で疲労研究をリードされている著者によって、疲労とは何なのか?どうすれば疲労を減らせるのかといったことについて詳しく書かれています。
本書で書かれている疲労についての知識は、かなり専門的な内容が多く含まれていますが、おそらくこの記事を読んでいただいている方は、専門的な知識はあまり必要ないという方が多いと思います。
そのためこの記事では、難しい専門的な知識は避けて、多くの人が誤解しやすい疲労と疲労感の違い、そして疲労を減らすためにはどうすればいいのかについて紹介していきます。
疲労とはなにかの要約
疲労と疲労感は違う!
皆さんは、疲労と疲労感の違いがわかりますでしょうか?
おそらく、違いがよくわからないという方も多くいるのではないかと思います。
まず疲労感とは疲れたという感覚です。
ですが、この疲れたという感覚は、人によって異なります。
日本人と欧米人でも疲れたという感覚は異なりますし、動物実験で使われるマウスの疲れたという感覚は、人間と同じわけではありません。
では、全ての人や動物に共通する疲労感の感覚とはなんなのか?
本書では次のように書かれています。
その答えは「休みたい」という気持ちです。
難しい言い方では「休養の願望」と言います。
(中略)
もう少し科学的な言い方をすると、過剰な活動によって体の組織に障害が生じているときに、脳にその危険を知らせてくれるのが「疲労感」という感覚です。
脳はこの感覚を感じることによって、無意識に活動を低下させます。
では、疲労はここまで紹介してきた疲労感とどのように異なるのか?
まず疲労とは、疲労感の原因となる体の障害や機能低下を指しています。
そして疲労は生理的疲労と病的疲労の2つに大別されます。
生理的疲労とは仕事や運動によって起こり、短期間の休養で回復するような疲労です。
この生理的疲労では、体内で産生された炎症性サイトカインという物質が脳に入ることで、疲労感を生じさせます。
一方で病的疲労とは、うつ病や慢性疲労症候群など、何ヶ月も続くような疲労のことです。
このように、疲労感と疲労とは同じような意味合いで使われることが多いかもしれませんが、実際に表している意味は異なるのです。
そのため、栄養ドリンク剤の広告でも、疲労軽減と書いてしまうと誇大広告になってしまうという理由から、疲労感軽減と謳っているものもあります。
残念ながらそういったドリンクを飲んでも、疲れたという感覚は緩和されたとしても、疲労によって起こった体の障害や機能の低下を治すことはできません。
むしろ、体の障害や機能の低下が起こっているのにも関わらず、疲れたという感覚が緩和されたことによって、さらに頑張ってしまい、体を壊してしまうことにつながってしまいます。
最悪の場合、栄養ドリンクやエナジードリンクを飲み過ぎることで、過労死をしてしまうなんてことにもなってしまいます。
では、疲労そのものを軽減させるためにはどうすればいいのか?
続いては、そのための方法について紹介していきます。
ビタミンB1不足は疲労回復力を低下させる
おそらく、ビタミンは疲労回復に効果があるというイメージを持っている方も多いのではないかと思います。
特にビタミンB1が不足によって発症する脚気は、ひどい倦怠感を伴うため、ビタミンB1と疲労の関係は注目されていました。
実際にビタミン剤や栄養ドリンク剤にも疲労回復効果を謳ってビタミンB1が配合されています。
そこで著者は、このビタミンB1が本当に疲労回復効果があるのかを調べたそうです。
その実験では、ビタミンB1を含まない食事をマウスに4週間与え続けたところ、マウスの疲労回復指数は著しく低下したという結果が出ました。
そのため、ビタミンB1が不足すると疲労回復力が低下することが、著者の実験からわかりました。
ビタミンB1は肉や小麦などから摂取することができます。
また精米された白米ではビタミンB1は十分に含まれていませんが、玄米であればビタミンB1がしっかりと含まれています。
日本人は、かつては玄米からビタミンB1を摂取していましたが、白米を食べるようになったことで、ビタミンB1が不足するようになり、脚気を発症する人が多くなったと言われています。
そのため、疲労回復力をあげるためには、白米ではなく玄米にすることも効果的です。
また飲酒をすることで、体内のビタミンB1は大量に消費されてしまいます。
そのため、疲労を解消したいのであれば、なるべく飲酒は避けるべきです。
最後に、ビタミンB1が配合されている栄養ドリンク剤についてですが、ビタミンB1が疲労回復力をあげるのに役立つことはわかっていますが、栄養ドリンク剤を飲むことが体にいいかはわかっていません。
そのため、なるべく普段の食事やビタミン剤などから摂取するようにした方がいいです。
ビタミンB1が疲労と関係していることについては、すでにご存知の方も多いと思いますので、続いてはビタミン以外に疲労回復に効果のある栄養成分について紹介していきたいと思います。
疲労回復に効果のある栄養成分とは?
世の中には、疲労に効くと言われている食品が沢山あります。
しかし、その多くは抗酸化作用によって、疲労感を減少させているだけのものもたくさんあります。
抗酸化作用が疲労感を減少させるメカニズムについては、本書では詳しく解説されておりますので、もし深いところまで知りたいという方はぜひ読んでみてください。
この抗酸化作用は疲労を減少してくれるわけではなく、疲労感のみを減少させるだけなので、疲れが取れたと感じることができたとしても、元の原因となる疲労を回復することができていないのです。
そのため、疲労に効くと言われているものは、本当は疲労感のみを減少させるものをあるため注意が必要です。
では、どういった栄養成分が疲労を回復させることができるのか?
本書では、次の4つの成分が疲労を回復させるものとして紹介されています。
①ガンマ・オリザノール
②ケルセチン
③アンセリン
④ベータ・アラニン
『疲労とはなにか』より
まずガンマ・オリザノールは、米糖に含まれており、高脂質血症や心身症の治療薬としても使われています。
特に玄米に多く含まれています。
このガンマ・オリザノールによって疲労回復を促す物質(リン酸化eIF2a脱リン酸化酵素)を増加させることができます。
また生理的疲労に繋がる、心臓における炎症性サイトカインの抑制にも効果があります。
続いてケルセチンは、玉ねぎやリンゴなどに多く含まれる成分です。
このケルセチンも、ガンマ・オリザノールと同じような効果があることがわかっています。
続いてアンセリンはマスやカツオの筋肉、鳥の胸肉に多く含まれる成分です。
心臓における炎症性サイトカインの抑制効果もあり、なおかつ疲労回復指数の増加も観察されています。
最後にベータ・アラニンは先ほど紹介したアンセリンや哺乳類の筋肉に含まれるカルノシンの分解によって生じる成分です。
このベータ・アラニンも、ガンマ・オリザノールと同じように、疲労回復を促す物質(リン酸化eIF2a脱リン酸化酵素)を増加や心臓における炎症性サイトカインの抑制といった効果があります。
もしかしたら、これまで疲労に効くと言われて摂取していたものが、実は疲労感の減少に効果のあるものだったということもあると思います。
そのため、疲労そのものを減少させたいという方は、ぜひ今回紹介した栄養成分を意識して食べる食事を考えてみてください!
この記事では、なるべく専門的な知識は省いて紹介してきました。
そのため、疲労について専門的な知識を知りたいという方や、うつ病や慢性疲労症候群などの病的疲労についても知りたいという方は、ぜひ本書を読んでみてください!
ではでは。