今回は、エヴァ・ファン・デン・ブルック氏とティム・デン・ハイヤー氏著の『勘違いが人を動かす』を紹介していきます。
本書は、オランダでベストセラーになり、世界各国でも刊行されている、今世界で話題の1冊です。
著者であるエヴァ氏はユトレヒト大学で講師をされている行動経済学者、ティム氏はクリエイティブ戦略家、行動デザイナー、コピーライターとして活躍されています。
本書は、そんな人の行動に関するエキスパートであるお二人によって、我々の選択と行動について書かれています。
この記事では、本書の中から、我々を動かしているものは何なのか、また日常の選択や行動の裏側にある原因について紹介していきます!
勘違いが人を動かすの要約
我々を動かすもの
皆さんは、オランダのアムステルダム・スキポール空港の男子トイレを知っているでしょうか?
この空港の男子トイレの小便器には、ハエが描かれているのです。
なぜトイレにハエが描かれているのか?
それは、利用者がトイレの真ん中に向けて小便をしてもらうためです。
特に空港では、時差ボケしている人もいるため、用を足すときにトイレを外してしまうことが多いです。
しかし、ハエを描いておくことで、利用者は自然とハエを狙ってトイレをするようになりました。
その結果、この空港では床にこぼれる尿の量が5割も減り、清掃費を大幅に削減することができました。
おそらく、トイレを綺麗に使いましょうと張り紙をしたとしても、利用者の使い方に大きな変化はなかったと思います。
実際に日本でも、そういった張り紙や注意書きがされていても、汚いトイレはあります。
しかし、トイレに的となるハエを描くといった、本当に小さなことが人の行動を影響を及ぼすのです。
私たちは、自分の行動は自分で決めていると思い込んでしまいます。
ですが、実は日常のあらゆる場面で、トイレのハエのように私たちの行動は誘導されているのです。
スーパーで買い物をする時に、レジ横に置かれたお菓子をついつい買い物かごに入れてしまう、同じブランドの洋服ばかり買ってしまう、本当は必要ないのにセール品を買ってしまうなど、あまり普段考えないことかもしれませんが、思いもよらない何かに私たちの行動は影響されています。
こういった行動の誘導には、認知バイアスが使われています。
認知バイアスとは、人間の先入観や偏見といった勘違いです。
この認知バイアスによって、私たちは合理的ではない行動をとってしまうのです。
また、認知バイアスを活用してマーケティングを行っている会社も多くあります。
そして、本書では様々な認知バイアスについて解説されています。
そのため、本書を読み認知バイアスを知ることによって、認知バイアスによって自分に悪影響な行動をとってしまうことを減らすことができます。
また、人に動いてもらいたいときにも、認知バイアスを使うことで、効果的に動かすことができます。
もちろん悪用は厳禁ですが、人間の認知バイアスを知ることで、今の生活をよりよいものにすることができるのです。
この記事では、認知バイアスについて実例をもとに紹介していきます!
キャッシュバック制度の裏側
皆さんは、キャッシュバック制度を利用したことがあるでしょうか?
私も自宅のWifiを変えたら、後日何万円かキャッシュバックがあるという特典を使って、Wifiを変えたことがあります。
他にも、キャッシュバックをうたい文句に売っている商品やサービスはたくさんあります。
もしかしたら、そんなにキャッシュバックをしていては、売り手は儲からないのでは?と思われるものもあるかもしれません。
しかし、実はキャッシュバックは売り手が得をする販促手法として知られています。
その理由は、実際に4割はキャッシュバックを利用しないからです。
キャッシュバックは、たいていの場合、何か月後など後日にされることが多いです。
そして、キャッシュバックは自動的に口座に振り込まれるものよりも、後日申請をしなければいけないものが多いです。
そのため、購入時は後日に申請すればキャッシュバックされるんだから、ちゃんとやるだろうと思い購入するのですが、申請が複雑でめんどくさく、後でやればいいやと先延ばしにしてしまい、気づいたときには申請期限が過ぎていたなんてこともあると思います。
ノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラーは物事を必要以上に難しくするものをスラッジと名付けました。
人のついつい先延ばしにしてしまう癖や怠けてしまう性質を活用したスラッジは、キャッシュバック制度以外にも様々あります。
実際にアメリカでは、選挙登録に何時間も並ばなければいけなかったり、オランダでは鉄道の定期券をキャンセルするのにかなりの手間がかかります。
最近利用者が増えているサブスクの中にも、解約するのに手間がかかるものもあります。
このように、我々のめんどくさがる性質を活用して、めんどくさく作られている制度は多くあります。
とはいえ、このスラッジは悪いことばかりではありません。
イギリスでは、自殺に使わることが多かった解熱鎮痛剤のパッケージを大容量のものから小さな押田意識シートに変更して、一人当たりの購入数に上限を設けたことで、自殺者数が激減しました。
生きるか死ぬかの決断においても、こういった小さな変化が大きな影響をもたらすことがあるのです。
また個人レベルでも、アメリカではクレジットカードでの買い物を控えるために、冷凍庫でカードを氷の中に閉じ込めておくという人もいます。
そうすることで、氷が解けるまでのあいだに、衝動買いで散財しないように考える時間を作ることができます。
このように、スラッジによって、よくも悪くも私たちの行動を制限することができるのです。
セールや期間限定を無視できない理由
中には、セール品と書いてあると、買う予定ではなかったものでもつい買ってしまうという人も多くいると思います。
また、期間限定という言葉に弱い人も多くいると思います。
私も期間限定のお菓子は、ついつい買ってしまいます。
なぜ私たちは、セールや期間限定に弱いのか?
それは、何かを逃すことへの恐怖を感じてしまうからです。
特に人間は、何かを得る喜びよりも、何かを失う悲しみを強く感じると、行動経済学では言われています。
そのため、これを逃したら、次はないかもしれない、もう手に入れられないかもしれないという心理が働くことで、セール品や期間限定の商品をついつい買ってしまうのです。
お菓子などのちょっとしたものであれば、セール品や期間限定のものを買って失敗をしたとしても、あまり影響はないと思います。
しかし、マイホームや車など、大きな買い物の場合は、こういった言葉に踊らされて、よく考えずに購入してしまうと、後で大きな後悔をすることになるかもしれません。
そのため、大きな買い物ほど、セールや期間限定という言葉に踊らされていないかを考えることが大切です。
言い方で選択が変わる
皆さんは、フレーミング効果を知ってるでしょうか?
フレーミング効果とは、「問題や質問の提示のされかたによって、選択・選好の結果が変わること」です。
例えば、医者から「この手術を受ければ、90%の確率で助かります」と言われれば安心すると思いますが、「この手術を受けても10%の確率で死にます」と言われてしまうと不安に思ってしまうと思います。
「この手術を受ければ、90%の確率で助かります」も「この手術を受けても10%の確率で死にます」は、どちらも同じことを言っています。
しかし、話のどこに重点を置くかによって、受ける印象が大きく変わります。
他にも、95%脂肪カットヨーグルトと言われると健康的に聞こえますが、脂肪5%入りヨーグルトと言われると、濃厚な味わいを感じやすくなります。
このフレーミング効果を調べるために、実際にダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーが行った実験があります。
この実験の被験者は、次のような質問を受けました。
アメリカは、アジア病という伝染病の大流行に備えています。
アジア病の流行を放置してしまうと、死者数が600人に達してしまうと予測されています。
アジア病の対策として、次の2つのプログラムが提案されています。
①A案を採用すると200人が助かります。
②B案を採用すると3分の1の確率で600人が助かりますが、3分の2の確率で1人も助かりません。
あなたはどちらのプログラムを採用しますか?
実際にこの質問に回答した大半の人が①の案を採用したそうです。
内容は同じですが、次のように選択肢が言い換えて質問をした実験もあります。
①a案を採用すると、400人が死にます。
②b案を採用すると、3分の1の確率で全員助かりますが、3分の2の確率で600人が死にます。
このように質問された場合、多くの人が②を採用したそうです。
どちらも同じ内容であるはずなのに、質問を言い換えることで、選択が変わるという結果がでました。
このように、私たちの行動や選択は言い方が変わるだけで影響を受けます。
そして、モノやサービスを売る時に、このフレーミング効果を使って、魅力的に見せようとする営業マンもいると思います。
フレーミング効果を見破ることは、なかなか難しいかもしれませんが、そういった手法があるということを知っているだけでも、巧みな言葉に惑わされてしまうことを防ぐことができると思います。
本書では、この記事では紹介しきれていない認知バイアスやその実例について、まだまだ紹介されています。
そのため、自分を守るためであったり、人を動かすために認知バイアスを活用したいという方は、ぜひ本書を読んでみて下さい!
ではでは。