今回は、細田高広さん著の『コンセプトの教科書』を紹介していきます。
皆さんには、自分の意見や企画がなかなか通らない、何となくアイデアは出るが、フワッとしていて言語化できないといった悩みはないでしょうか?
こういった方は、コンセプトの力が足りていないのです!
コンセプトがないからこそ、企画に一貫性がなかったり、なんでそれをするのかという理由がはっきりしないのです。
そこで、数々のコンセプト開発を手掛けてきた世界的クリエイティブ・ディレクターである著者によって書かれた本書を読むことによって、新しい価値を生むためのコンセプトの作り方を学ぶことができます!
この記事では、そもそもコンセプトとは何なのか?とコンセプト作りの基礎を中心に紹介していきます!
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コンセプトの教科書の要約
コンセプトとは?
本書ではコンセプトとは、「全体を貫く新しい観点」であると書かれています。
例えば、スターバックスには「第3の場所」というコンセプトがあります。
「第3の場所」は、英語ではサードプレイスと呼ばれており、最初は社会学者のレイ・オルデンバーグ氏が提唱しました。
オルデンバーグ氏は、現代人が第1の場所である自宅と、第2の場所である職場の往復だけで生活をしていることを問題視しており、自分を取り戻し、ストレスを減らすために「第3の場所」の重要性を唱えていました。
そこで、スターバックスを世界企業へと成長させたハワード・シュルツ氏がスターバックスのコンセプトに第3の場所を取り入れました。
実際に、スターバックスに行くと感じると思いますが、店内のインテリアや流れてくる音楽、そして香りによって、ゆったりとしたくつろげる空間になっています。
スターバックスは「第3の場所」というコンセプトに一貫して、立地から店の雰囲気、接客に至るまで作り上げているのです。
そして、ストレスや忙しさに追われることのない3の場所になることができたため、割高な値段でも、多くの人がリピートしてくれます。
現代人は、「なにを買うか」の前に「なぜ買うか」の答えを知りたがります。
一昔前であれば、良いものを安く作れば売れたかもしれません。
しかし、今はいいものを安く作れば必ず売れるわけではありません。
買う価値や意味を感じることができなければ、現代人を動かすことはできないのです。
そのため、スターバックスの第3の場所のように、その会社や製品の存在意義が必要であり、それを考えることがコンセプトを作るということなのです!
いいコンセプトとは?
ここまで、これからの時代はコンセプトが重要になるというお話をしてきました。
とはいえ、コンセプトはあればいいというものではありません。
良いコンセプトもあれば、悪いコンセプトもあります。
では、良いコンセプトとは何か?
本書では、次の4つの基準を満たしていることが、良いコンセプトであり、機能するコンセプトであると書かれています。
①「顧客目線」で書けているか
②「ならでは」の発想はあるか
③「スケール」は見込めるか
④「シンプル」な言葉になっているか
『コンセプトの教科書』より
まず「顧客目線」で書くことが大切です。
コンセプトは、「誰を」「どのように幸せにするか」を明確にする必要があります。
もちろん、会社の売上を上げて従業員を幸せにすることも大切ですが、それでは消費者は価値を感じません。
消費者は自分が幸せになれるから、その商品やサービスを選びます。
そのため、まずは顧客目線でコンセプトを書くことが大切です。
2つ目の条件は、「ならでは」の発想はあるかです。
どんなに顧客目線で書かれていたとしても、すでに世の中にあるものであったり、よくあるものでは選んでもらえません。
そのため、良いコンセプトを作るためには、あなたやあなたのチーム、会社独自の「ならでは」と呼べる発想を見つけることが大切です。
3つ目の条件が「スケール」は見込めるかです。
ビジネスを成り立たせるためには、ある程度のスケールが必要です。
個人経営の小さな喫茶店であれば、スターバックスの「第3の場所」のように、大きなコンセプトを持たなくてもいいかもしれません。
しかし、規模の大きい会社であれば、それなりに人を集めることができるコンセプトが必要になります。
そして、最後の条件が「シンプル」な言葉になっているかです。
どんなに顧客目線で独自性があったとしても、言葉が長く複雑な文章で書かれたコンセプトでは機能しません。
長く複雑なコンセプトは、パッと理解できません。
それでは、従業員やチームのメンバーへ上手く共有することができません。
そのため、「シンプル」な言葉で、すぐに意味が理解できるコンセプトを作ることが大切なのです。
コンセプト作りはまずは問いから!
コンセプト作りは問いから始まります。
それは、意味のある問いをたてるからこそ、意味のあるコンセプトが生まれるからです。
先ほども触れた通り、現代人は「なぜ買うか」を重要視します。
その「なぜ」の部分が薄いと、選ばれなくなってしまうのです。
そのため、意味のあるコンセプトを作るために、意味のある問いを立てる必要があります。
では、意味のある問いとは何なのか?
本書では、問いの良し悪しは「自由度」と「インパクト」で決まると書かれています!
自由度とは、問いが誘発する答えの幅です。
自由度が高いと、その分選択肢も増えます。
一方でインパクトとは、社会や生活への影響力です。
この自由度とインパクト両方が大きい問いが良い問いであり、向き合うべき問いであると書かれています。
では、どうすれば良い問いを作ることができるのか?
本書では、リフレーミングという方法が解説されています!
リフレーミングとは、「物事の捉え方を変え、別の枠組みで捉え直すこと」です。
例えば、エレベーターが遅いというクレームがあるとします。
その問題を解決するためには、まず「エレベーターの速度を上げるには?」という問いが思い浮かぶと思います。
しかし、エレベーターの速度を上げるためには、エレベーターを取り換えなくてはいけないため、費用に余裕がなければ出来ません。
また、「エレベーターの速度を上げるには?」という問いは、インパクトはあるかもしれませんが、自由度にかけ、良い問いとは言えません。
そこで、「エレベーターの速度を上げるには?」という問いをリフレーミングして、「エレベーターの待ち時間を短く感じさせるには?」という問いを立てていきます。
エレベーターの待ち時間を短く感じさせるための方法は、エレベーターの扉を鏡にする、モニターを設置してニュースや教養コンテンツを流すといった方法が考えられます。
鏡があると人は自分の姿に気をとられるため、待ち時間が気にならなくなりますし、モニターでニュースや教養コンテンツが見れたら、待ち時間が少し楽しく感じるようになるかもしれません。
このように、リフレーミングは良い問いを作り出すために、とても効果的な手法なのです。
そして、本書ではリフレーミングの手法として、次の9つが紹介されています。
①全体の問い
②主観の問い
③理想の問い
④動詞の問い
⑤破壊の問い
⑥目的の問い
⑦利他の問い
⑧自由の問い
『コンセプトの教科書』より
全ての手法を解説していると、とても長くなってしまうので、今回は⑤破壊の問いに絞って紹介していきます。
破壊の問いとは、何をつくるべきかではなく、何を壊すべきかで考える手法です。
カシオのG-SHOCKは開発者が、大切な時計を落として壊したときに、「なんで落としたくらいで壊れるんだ」と怒りを感じたことが、開発のきっかけになったと言われています。
それまでの時計は落としたら壊れるのは当たり前という常識を破壊し、「落としても壊れない腕時計」というコンセプトをもとにG-SHOCKは開発されました。
また、GUはパンプスは窮屈であるという常識を破壊したことで、マシュマロパンプスを生み出し、発売から1年で170万足を売り上げました。
もし、GUが「今売れるパンプスとは?」という視点で考えていたら、マシュマロパンプスは発明されなかったかもしれません。
今売れるパンプスではなく、「パンプスの窮屈さを破壊するためには?」という問いを立てたからこそ、「靴の方が足に合わせてくる履き心地」を実現したマシュマロパンプスが誕生したのです。
このように、それまでの常識やみんなが抱えている不満を破壊するという視点でリフレーミングすることによって、良い問いを作ることができます。
4つのCで語れ!
最後に、先ほど立てた問いから、コンセプトを作っていく方法を紹介していきます。
それが4Cでストーリーを考えるです!
マーケティングを学んだことがある方であれば、3C分析という言葉を聞いたことがあると思います。
3Cとは、Customer(顧客), Competitor(競合), Company(会社)の3つを指しています。
コンセプトを作る時には、その3CにConceptを加えて、4つのCで考えていきます。
そして、4つのCは次の順で考えていきます。
①Customer インサイト(ユーザーが困っている)
→②Competitor 競合(しかし誰も助けない)
→③Company 自社だけのベネフィット(そこで、私たちが「こんな手」を差し伸べる)
→④Concept 新しい価値(つまり/だから、これが解決策)
このように、コンセプトは顧客の困りごとから始まり、それを解決するカタチで作っていきます。
この顧客の困りごとを解決するからこそ、コンセプトに価値を感じてもらえるようになります。
実際にスターバックスの第3の場所というコンセプトができるまでのストーリーを、上記の流れに沿って確認していきましょう。
①Customer→家庭と職場を往復するだけの生活でストレスがたまっている
②Competitor→都市にはリラックスできる場所がない
③Company→くつろげる空間を作る
④Concept→家庭と職場の間にある第3の場所
このように、4つのCでストーリーを組み立てていくことで、コンセプトを作り上げることができます。
本書では、Customer, Competitor, Companyの3つのCの掘り下げ方について、分かりやすく解説されています。
そのため、もっとコンセプト作りについて深く学びたいという方は、ぜひ本書『コンセプトの教科書』を読んでみて下さい!
『コンセプトの教科書』を読んだ感想
私のyoutubeチャンネルは、「ふとんの上も学び場」というコンセプトを持って運営しています。
それは私自身が、休みの日にふとんの上でダラダラしてしまうことが多く、無駄な時間を過ごしてしまうことが多かったからです。
そこで、だらだら流しみても勉強になるコンテンツをつくることができないか考えたのが、今のふとん大学の始まりでした。
個人的には、この「ふとんの上も学び場」というコンセプトは気に入っているのですが、作る動画がそのコンセプトの沿っているものになっているのか、本書を読むことで疑問を感じました。
そのため、一貫性を持たせるためにはどうすれば良いのかを考えることで、視聴者の方にとって、もっと価値のあるチャンネルを作ることができるのではないかを考えています。
私も本書を参考に、このチャンネルについてもっと考えていきたいと思います。
これまで、フワッとしたアイデアしか出せなかったという方や、新しモノを作って、社会をもっとよりよくしたいという願望を持っている方は、ぜひ本書を読んでみて下さい!
ではでは。